ギャラリーcave特別展示スペイン「オスコス村の鍛冶仕事」展 作家紹介トケーロの話
明けて今日、3月3日から始まるスペイン「オスコス村の鍛冶しごと」展はギャラリーcave にとって初めての作家展になる。
今日一日、設営をしていてこの作家の展示をできてホントに良かったと思った。
今回展示するのは鍛冶工房「ひょっとこ」のトケーロとケイコの二人の作品たち。トケーロはスペインのバジャドリッドという町で生まれ育ちDJとして活躍していた。今でも街に帰ればDJトケで通る。街を離れ山深い鍛冶の村タラムンディで鍛冶修行を始めたのは28歳の時だ。
この村には鍛冶工房がいくつもあり昔から折り畳み式のポッケットナイフを作っている。フランスのオピネルナイフの源流でもある。各工房がそれぞれ独自のデザインを持ち、デザインを見ればどの工房のナイフかわかる。そしてそのデザインはこの地方独特の形式を共有している。
この形式の矩を超えてしまうとタラムンディの伝統ナイフではなくなってしまう。と言っても、他の工房のナイフとは違うデザインでなければならない。
長い歴史が峻別し、生き延びてきたそれぞれのデザインに新たなデザインを付け加えるのは並大抵の困難ではないだろう。
彼は7年かけてそれを成し遂げた。彼の作る折り畳みナイフはどこからどう見てもタラムンディの伝統ナイフであり、他の誰とも混ざらない独自性を持っている。
その後、彼は新たな伝統への挑戦を始めた。和鉄を使った日本の伝統鍛造のナイフ作りだ。
2009年から毎年、日本の刃物鍛冶師を訪ね修業を重ねてきた。
今回、古式鍛造和刃物をラブレスナイフのスタイルでこしらえた作品を日本の名工たちに見てもらったのだが、一様に造りの確かさを褒めてもらえたそうだ。そしてナイフのデザインについて質問攻めにあったという。
ナリやかたちだけを真似て伝統だと言い張る人もいる。あるいはかたくなに伝統を守り徹して衰退していくものもある。モノづくりの伝統とは先人が一人一人知恵を積み重ねてできた塔だ。知恵をかすめ取るばかりでは塔は崩れる。守るだけでは塔は大きくなれない。
モノづくりにおける伝統のありがたいところは、時代が違えど、国や文化が違えど誰にも役に立つというところだ。そして伝統を育てるのも時代や国や文化にこだわらない。熱意をもって挑戦し、誠実に取り組むひとがモノづくりの塔に一つ石を積み重ねることができる。トケーロもその一人なのだ。
ギャラリーcaveは人と人を隔てる国境や文化や宗教が生まれる前、焚火を囲んで洞窟で暮らしていたことを思い出して、お互いの違いではなく共通項を持ち寄って豊かさを産み出したいという想いから生まれた。
そんな想いのこの洞窟に、正にぴったりの人物に来てもらえてホントにうれしい。
時代も文化も越えて学び挑戦してきたトケーロが、手に入れた石を積み重ねる時、世界がまた少し豊かになる。その瞬間を見てほしい。
今日一日、設営をしていてこの作家の展示をできてホントに良かったと思った。
今回展示するのは鍛冶工房「ひょっとこ」のトケーロとケイコの二人の作品たち。トケーロはスペインのバジャドリッドという町で生まれ育ちDJとして活躍していた。今でも街に帰ればDJトケで通る。街を離れ山深い鍛冶の村タラムンディで鍛冶修行を始めたのは28歳の時だ。
この村には鍛冶工房がいくつもあり昔から折り畳み式のポッケットナイフを作っている。フランスのオピネルナイフの源流でもある。各工房がそれぞれ独自のデザインを持ち、デザインを見ればどの工房のナイフかわかる。そしてそのデザインはこの地方独特の形式を共有している。
この形式の矩を超えてしまうとタラムンディの伝統ナイフではなくなってしまう。と言っても、他の工房のナイフとは違うデザインでなければならない。
長い歴史が峻別し、生き延びてきたそれぞれのデザインに新たなデザインを付け加えるのは並大抵の困難ではないだろう。
彼は7年かけてそれを成し遂げた。彼の作る折り畳みナイフはどこからどう見てもタラムンディの伝統ナイフであり、他の誰とも混ざらない独自性を持っている。
その後、彼は新たな伝統への挑戦を始めた。和鉄を使った日本の伝統鍛造のナイフ作りだ。
2009年から毎年、日本の刃物鍛冶師を訪ね修業を重ねてきた。
今回、古式鍛造和刃物をラブレスナイフのスタイルでこしらえた作品を日本の名工たちに見てもらったのだが、一様に造りの確かさを褒めてもらえたそうだ。そしてナイフのデザインについて質問攻めにあったという。
ナリやかたちだけを真似て伝統だと言い張る人もいる。あるいはかたくなに伝統を守り徹して衰退していくものもある。モノづくりの伝統とは先人が一人一人知恵を積み重ねてできた塔だ。知恵をかすめ取るばかりでは塔は崩れる。守るだけでは塔は大きくなれない。
モノづくりにおける伝統のありがたいところは、時代が違えど、国や文化が違えど誰にも役に立つというところだ。そして伝統を育てるのも時代や国や文化にこだわらない。熱意をもって挑戦し、誠実に取り組むひとがモノづくりの塔に一つ石を積み重ねることができる。トケーロもその一人なのだ。
ギャラリーcaveは人と人を隔てる国境や文化や宗教が生まれる前、焚火を囲んで洞窟で暮らしていたことを思い出して、お互いの違いではなく共通項を持ち寄って豊かさを産み出したいという想いから生まれた。
そんな想いのこの洞窟に、正にぴったりの人物に来てもらえてホントにうれしい。
時代も文化も越えて学び挑戦してきたトケーロが、手に入れた石を積み重ねる時、世界がまた少し豊かになる。その瞬間を見てほしい。
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